瘻孔のケア その2

母が胃瘻を増設したのが2018年3月でした。

小規模多機能施設に通所していたのですが、だんだん嚥下が悪くなってきて、自宅でも口の中に食べ物を入れたまま転寝をするようになりました。
思うように食物を摂取できなくなると、本当に「あっ!」という間に体重が落ちていきました。
健康な時は46kgくらいだった体重が、2週間ほどで30kgまで落ちました。
オムツ交換をするたびに、腰骨や尾骶骨が飛び出てきて異常な状態になりました。
もう、明日になると29kgになってしまうかも、そんな状況になりました。
これは、もう自宅で私ができることは何も無いと判断し病院へ。
2017年12月のことでした。

検査の結果、低栄養・衰弱・機能不全など危険な状態だったことが判明し即入院となりました。

まず点滴で水分補給と栄養補給を開始。
点滴は感染症を防ぐために数日で針を差し替えなくてはなりません。
母は高齢に加えて腕が曲がったままで点滴の針を入れる場所は手の甲か足しかありませんでした。
日ごとに針の跡の内出血でしょうか、黒い箇所が増えていきました。

一か月が経過し、体重がプラスに何りかけた時に主治医から告げられました。
年齢を考えると老衰だから覚悟しなくてはね・・・・・と。
今後をどうするかの判断を迫られました。

点滴だけで、どんどん母が枯れていく姿を見ることは想像すらできませんでした。
看護師さんから、2か月後に無くなった患者さんのことを聞き、ますます自分にはその覚悟はできないと思いました。
今まで頑張って母のケアをしてきて、今の世界から母が消えてしまうことの想像ができなかった・・・というより嫌だと思いました。

何か良い治療は無いかと食い下がったら「CVポート」を造ろうかという提案になりました。
CVポートというのは鎖骨の下に装置を埋込、そこから治療薬や栄養を注入するというものでした。
外科の手術でポートを埋め込むことになるけれど、その後は点滴の針を数日ごとに差し替えることもなくなるし高カロリーの栄養も補給できるようになるという、私にとっては希望と思えるものでした。
即決してお願いしました。

ところが、数日後に外科の先生から話があると呼び出されました。
先生から話されたのはCVポートの増設をやめた方が良いとの提案でした。
確かに、CVポートを増設すると薬剤の投与や栄養の投与で腕や足に針を刺すことは無くなりますが、リスクが無くなる訳では無かったのです。
詳細はここでは割愛しますが、他に鼻からの経鼻経管栄養や、お腹に穴をあける胃婁による経管栄養もあるとの話をされました。
母が高齢でCVポートの埋設手術に耐えれるだろうかという心配もありました。
また、CVポートの手術や、胃瘻造設の手術も気になりました。
経鼻経管栄養で健康を取り戻している患者さんもたくさん居るというお話に背中を押され、母の体に傷をつけずに済む経鼻経管栄養をお願いすることにしました。

数日後から鼻からチューブを入れる経鼻経管栄養が開始されました。
でも、これも何日かおきに左右の鼻の穴を入れ替えなくてはならないことが分かりました。
チューブを入れ替えるたびに苦しそうな母を見て、これで良かったのかと疑問がわいてきました。
鼻から喉を通り胃まで続く経鼻経管栄養のチューブは、違和感があるだろうし喉にチューブがあるのだから考えたって苦しいだろうと思いました。

そんな時、少し前に心臓の大きな手術をした友人から聞かされた話がその後の決意となりました。
7時間に及ぶ手術の後、経鼻経管栄養もされたが耐えられなくて胃瘻造設をしたとのこと。
胃瘻は苦しみもないし喉の違和感もなく、胃婁は体力を回復したのち外されたら1日で瘻孔も閉じ完治したという。

母も元気になるために胃瘻を増設し、また元気になったら胃瘻を外せば良い。
今の苦しみをまず解消することが先だと思いました。
1か月の経鼻経管栄養を中止し胃婁の増設手術を実施しました。
内視鏡を使いながら胃とお腹の表面に穴を開け、胃婁のチューブを埋め込む手術です。
一週間後から胃婁からの経管栄養が開始しました。
手術後は、すぐ体重が33kgまで回復し、4か月の入院から退院し帰宅となりました。

以来、自宅での経管栄養が続いて来ました。
最初の問題は、別掲しますが下痢でした。
下痢の対策も大変でしたが何とか乗り越えました。

つぎの問題は肉芽でした。
お腹の穴(瘻孔)から出るチューブが穴に圧力をかけ、舌のような肉の盛り上がりができるのです。
母の場合は左右2つの肉芽が出ました。
毎日チューブと擦れて出血し、保護用のガーゼが赤く染まりました。

何とかならないかとネット検索をして、ある病院のドクターによる論文を発見しました。
チューブによる圧迫を軽減すれば1週間で肉芽は消滅するというものです。
早速ガーゼでチューブのスペーサーを作り除圧をしてみると、本当に肉芽は消滅しました。

今では出血もなくきれいな瘻孔になりました。
瘻孔の肉芽を記録していなくてお見せはできないのですが、間違いなく肉芽はなくなります。

参考になればなによりです。

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